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免疫力とは何か?

私たちの身体は、細菌やウイルスなどの外敵から常に攻撃を受けています。その攻撃から身体を守るのが「免疫システム」です。では、それはどんな仕組みなのでしょうか?

生きていくためには「免疫力」が不可欠

 免疫システムは、私たちが生きていく上でなくてはならない大切な仕組みです。その働きは、文字通り「疫病」から免れることです。
 疫病は、細菌やウイルスなどの微生物が原因で起こる病気のことです。例えば、細菌が原因で起こる病気には結核、コレラ、赤痢などがあります。一方ウイルスが原因の病気には、かぜ、インフルエンザ、はしかなどがあります。
 これらの病気にかからないよう身体を守ってくれるのが免疫システムです。さらに、病原菌やウイルスなどの微生物が免疫システムをすりぬけて感染してしまった時にも、最終的には免疫システムの力によって、身体を健康な状態に戻していきます。
 そのほかにも免疫システムは、日本人の死亡原因の第一位である「がん」から身体を守るという、大切な役割も果たしています。
 私たちの体内では、健康な人でも日々健康な細胞が「がん化」していると言われています。それでもがんにならないのは、免疫システムが、がん化した細胞を発見して排除しているからです。
 もしも免疫システムがなかったら、私たちがこの世界で生きていくことは難しいでしょう。それほど重要な仕組みなのです。
 「免疫力」とは、この免疫システムがもっている力のことです。「免疫力」が低下すると、感染症にかかりやすくなる、がんのリスクが高くなるなどの問題が起きます。
 そんなことにならないためにも「免疫力」を低下させないことです。さらに一歩進んで「免疫力」を鍛えるにはどうしたらよいのでしょうか? そのヒントを、1年間、このコーナーで紹介していきたいと思います。
 「免疫力」を低下させず、できることなら「免疫力」をアップさせる。そのための具体策を考える前に、まずは「免疫力」を支える免疫システムについて、見ていきましょう。

「獲得免疫」と「自然免疫」

 免疫システムには様々な特徴があります。そのひとつが一度ウイルスに感染したら、次回からは感染しないように身体を守ることです。それは、外敵の特徴を記憶していて、次の攻撃に備える仕組みです。この仕組みを「獲得免疫」と呼びます。
 もちろん「獲得免疫」だけでは未知の外敵に対応できないため、「自然免疫」と呼ばれる仕組みも用意されています。これは、もともと身体に備わっている防御力で、俗に言う「自然治癒力」です。「獲得免疫」の例としては、はしかやおたふくかぜがあります。これらの病気に一度かかると、基本的には二度と発症しません。では、なぜこのようなことが可能になるのでしょうか?

敵から身体を守る二つの戦略とは?

 「獲得免疫」の仕組みを理解するためには、免疫に関する基本的な用語の意味を知っておく必要があります。
 ポイントは「抗原」と「抗体」の二つの言葉です。「抗原」は、私たちの体内に入って問題を起こす原因となるものです。具体的には、細菌やウイルスなどです。
 一方「抗体」は、病気の原因になる「抗原」を排除したり無害化したりするために、免疫システムが作り出す物質です。いわば、身体を抗原から守る「防具」のようなものです。
 では、はしかを例にとって、どのように「獲得免疫」ができあがるのかを見ていきましょう。
 ポイントは、最初にはしかにかかった時には「獲得免疫」がないため、「自然免疫」で対応するということです。その結果として「獲得免疫」が得られるのです。
 はしかの原因はウイルスです。ウイルスは、細菌と違って自力だけでは増殖できない性質があります。では体内に侵入したウイルスは、どうやって体内で数を増やしていくのでしょうか?
 体内に侵入したウイルスは、私たちの細胞の内に入り込みます。細胞に侵入したウイルスは、人の細胞の力を利用して、自分の複製を作ります。その結果、体内でウイルスの数が爆発的に増えていくのです。
 これに対して、私たちの身体は二つの戦略を使って対抗します。
1)抗原(この場合は、はしかのウイルス)に対する抗体を作る
2)ウイルスに乗っ取られた細胞を殺して排除する

 この二つの対抗策を活性化する(免疫力を高める)ために、体温を高い状態にします。この発熱がはしかの重い症状なのです。しかし、最終的には二つの対抗策が勝利、次第に、体内のウイルスの数が減少していきます。その結果発熱も収まり「はしかが治った」という状態になるのです。

免疫には「学習能力」がある!

 ありがたいことに、免疫システムには「学習能力」があります。いったん、はしかにかかると、その情報を記憶しておくのです。このため、次にはしかのウイルスが体内に入ってきた時、短時間のうちに対抗策が整います。
 具体的には、抗体を作り、ウイルスに乗っ取られた細胞を排除する体制がすぐに準備されるのです。このため、はしかの症状で苦しむことがないわけです。

細菌・ウイルスによってどんな病気が起こるのか?
●細菌が原因で起こる病気や症状 ●ウイルスが原因で起こる病気
・結核(結核菌)
・コレラ(コレラ菌)
・にきび(アクネ菌)
・食中毒(サルモネラ菌・黄色ブドウ球菌など)
・かぜ(かぜウイルス)
・インフルエンザ(インフルエンザウイルス)
・エイズ(エイズウイルス)
・肝炎(A型・B型・C型肝炎ウイルス)
・食中毒(ノロウイルス)

健康日本 vol.469(2007年4月号)より